子どもには真実を隠した朝。夫を義実家へ送り出した日

不倫発覚までの経緯

朝、いつも通り子どもたちが起きてきた。
何も知らない顔で「おはよう」と言ってくるその無垢な声に、私は一瞬、言葉を詰まらせた。

昨夜、私は夫の不倫を知った。
しかも相手は3人――脅迫まがいのLINEの主だけではなかった。
裏切りの深さに打ちのめされながらも、私は決めていた。

「子どもたちには、不倫のことは言わない」

ショックを受けるだろうし、何より傷つけたくなかった。
だから、こう説明した。

「パパ、最近仕事が忙しくてね。しばらくの間、会社に近い実家から通うことにしたの。」

小さな嘘。

でも、守るための嘘だった。


この日の朝、私は“母としての戦い”を始めたのだと思う。

守るために嘘を付く

「おはよう」

まだ寝ぼけた顔の末っ子がリビングに入ってきて、いつも通りの声を響かせた。
私は笑顔を作って「おはよう」と返したけれど、その言葉の裏にあったものは、言葉にならなかった。

キッチンではお湯が沸く音。
そして、部屋の隅には静かに座る夫の姿。
昨夜あれほどの修羅場があったとは思えない、静かな朝だった。

本当は言いたいことが山ほどあった。
でも、私は決めていた。

子どもたちには、不倫のことは言わない。

壊れてしまったのは私たち夫婦の関係であって、父と子の絆まで壊してはいけないと思った。
だから私は、こう伝えた。

「パパ、最近すごく仕事が忙しくてね。会社の近くのおばあちゃんの家から、しばらく通うことにしたんだって」

「ふーん、そうなんだ」と素直に聞いてくれる子どもたちの無邪気な顔が、今は痛いほど眩しかった。


長男だけが一瞬、私と夫の間の空気に気づいたように目を伏せた。

でも、何も聞かなかった。
その沈黙が、かえって胸に突き刺さった。

子どもたちを学校と幼稚園に送り出したあと、リビングに2人きりの気まずい空気が流れる。
私は玄関に向かって歩き出した夫に声をかけた。

「……自分の口でちゃんと説明してね。全部。」

夫は立ち止まり、私に背を向けたまま、声を震わせてこう言った。

「……ほんとに、ごめん。
 ……ずっと、ゆるりのことも、子どもたちのことも、本当に大切だった。
 だから……何してるんだろうって、ずっと自分でも……わからなかった……」

振り向いた夫の目から大粒の涙がこぼれた。
嗚咽交じりに「許してほしい」と何度も口にした。

かつての夫は、本当に“理想の夫”だった。
優しくて、家事にも育児にも協力的で、子どもたちともよく遊んでくれた。
仕事が忙しくても、家族の時間を大切にしてくれていた――そう思っていた。

だからこそ、裏切りの衝撃は大きすぎた。
謝罪の言葉は、どこか本心からのようにも聞こえた。

でも、私はもう戻れなかった。

「……泣いたって、もう遅いよ」


そう言って、私はリビングのドアを閉めた。

夫が玄関を出る音がして、やがて静かになった。

私はゆっくりと深呼吸をして、ソファに座り込む。

優しかった夫。
今はもう、“嘘を積み重ねた他人”。

そう自分に言い聞かせながら、これからどう生きるかを考え始めた朝だった。

義母の願い、私の決意

義母から電話がかかってきたのは、その日の午後だった。


「一度、話せない?」と、静かな声で言われた。

夫から事情を聞いたのだろう。
私は迷いながらも、義実家へ向かうことにした。

玄関を開けると、義母がひとりで出迎えてくれた。義父の姿はなかった。

「来てくれてありがとうね」
そう言って通されたリビングは、以前と変わらず整っていて静かだった。

私が座ると、義母は深く頭を下げた。

「本当に……本当にごめんなさい。
まさか、うちの子がそんなことをしていたなんて……。
あなたたち、仲良しだと思ってたのよ」

私は黙ってうなずいた。
ただ、それが“何も言えなかった”のか、“言いたくなかった”のか、自分でもよく分からなかった。

バッグから封筒を取り出し、私はそっと義母の前に差し出した。

「これ、夫の生活費です。とりあえず今月分……。
 子どもたちのことは私が見ますので、夫のことはよろしくお願いします。」

義母は驚いたようにその封筒を見たあと、ゆっくりと首を横に振った。

「……そんなの、受け取れないわ。
 あの子が悪いんだから……それに息子が帰ってくるだけなんだからお金はいらないわ。」


義母の真っ直ぐな断り方が、逆に重く感じられた。

帰り際、私は立ち上がる前に、口を開いた。

「……脅迫してきたA子だけじゃありません。
会社の同僚と後輩、2人も不倫していたことを認めました。
その2人には慰謝料を請求します。」

義母の顔が凍りついたように動きを止めた。
でも、すぐにふと苦笑のようなものを浮かべて、ぽつりとつぶやいた。

「……あの子、昔は全然モテなかったのにね。
 なんか、変な話だけど……びっくりしちゃった」

私はその言葉に、返す言葉が見つからなかった。
少し嬉しそうにさえ見えたその顔に、複雑な思いだけが胸に残った。

玄関を出る間際、義母が小さくつぶやいた。

「……あの人(義父)もね、昔不倫してたのよ。
 私、何もできなくて、ただ泣いて終わったの。
 だから……あなたがちゃんと声を上げてるのを見て、すごいなと思ってるのかもしれない」

その言葉に私は返せる言葉を持っていなかった。
ただ小さく頭を下げて、家をあとにした。

春の風が吹いていたけれど、どこか心の中は冷たかった。

弁護士探し:怒りを行動に変える決意

義実家からの帰り道。
私はずっとスマホを握りしめていた。

涙が出るわけでもなく、怒鳴りたくなるわけでもない。
ただ、心の奥で何かがじわじわと固まっていくのを感じていた。

このまま終わらせない。
誰かが、ちゃんと責任を取らなきゃいけない。

そう思って、私は前日の夜から調べていた弁護士事務所に、順番に電話をかけ始めた。

条件は3つだけ、明確だった。

  1. なるべく早く対応してくれること
  2. リモートでの対応が可能なこと
  3. 初期費用がなるべく抑えられること

いくつかの事務所に電話をかけた。
無料相談を60分まで受け付けてくれるところもあったし、初回から料金が発生するところもあった。

でも、最終的に私が「ここにしよう」と思えたのは、ある事務所の弁護士が言ってくれた、この一言だった。

「ゆるり様のご希望に添えるよう、精一杯対応させていただきます」

その言葉に、私は思わず涙が出そうになった。

“味方がいる”って、こんなにも心強いんだと思った。

私の中にあった「本当に慰謝料請求なんてしていいのか」「やりすぎなんじゃないか」という迷いが、その瞬間少しだけ軽くなった気がした。

これは復讐ではない。


自分の人生を取り戻すための、一歩だ。

区切りをつけないと、私はきっと前に進めない。

そう思えたことで、私はようやく「行動できる自分」になれた気がした。

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